「The Neighbourhood of Platinum」が開くバンコクCBDの商機
――タイで個人起業を目指す日本人が読むべき再開発マップ
バンコク中心部ラチャプラソン〜プラトゥーナム〜ラチャプラロップ一帯で、タイの大手デベロッパー「Platinum Group」が大規模な戦略転換に動いています。同社はこのエリアを「The Neighbourhood of Platinum」と位置づけ、国際旅行者とショッパーを主なターゲットにした「CBD型メガ・ミックスユース」の構築を打ち出しました。
タイでの個人起業、とりわけ小売・飲食・美容・ファッション分野での出店を検討する日本人にとって、この再開発は今後10年前後を左右する“地図の描き換え”に近いインパクトを持ちます。本稿では、公開されている計画に基づき、どこにどのようなビジネスチャンスがあり得るのかを整理します。
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この記事の目次
1. バンコク中心部に誕生する「メガ・ネイバーフッド」の骨格
Platinum Groupは、既にこの一帯で以下の資産を保有・運営しています。
– ショッピングセンター3施設
– Platinum Fashion Mall
– THE MARKET BANGKOK(後述の通り「PLATINUM POP」にリブランド)
– THE PLATINUM SQUARE(後述の通り「PLATINUM PALAIS」に改称)
→ 合計延床面積は約345,475平方メートル
– ホテル3軒(合計1,300室超)
– Novotel Bangkok Platinum Pratunam
– Moxy Bangkok Ratchaprasong
– Mama Shelter Bangkok Platinum(開業予定)
– オフィス
– THE MARKET BANGKOK内「Pier 111」オフィスビル(約55,000平方メートル)
これらを、スカイウォーク(ラチャプラソン・スカイウォーク)とBTSチットロム/サイアム駅、そしてプラトゥーナム船着場へのアクセスでつなぎ、「ショッピング+観光」だけでなく、「住む・働く・出会う・創る」というライフスタイル全体を包含するエコシステムに高める構想です。
将来的にはオレンジラインMRTも接続予定とされ、同エリアは交通結節点としての機能を一段と強めます。個人起業家にとっては「人が自然に集まる動線に、どのように自分のビジネスを重ねるか」が問われる局面と言えます。
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2. PLATINUM POP:ポップライフの中心で何を売るか
「THE MARKET BANGKOK」が「PLATINUM POP」に
長年ホールセール・リテール型ファッションモールとして成功してきたPlatinum Fashion Mallの「Variety(多様性)」「Value(価値)」「Volume(ボリューム)」という“Platinum DNA”を横展開するかたちで、THE MARKET BANGKOKは「PLATINUM POP」へと大規模リブランドされます。
新たなポジショニングは「The Centre of Bangkok’s Pop Life」。
24時間眠らないバンコクのエネルギーを背景に、「境界を感じさせない」柔軟なリテール体験を志向しており、
– 高いエネルギー感
– 柔軟な業態ミックス
– “バリューファースト”の価格・サービス
がキーワードとして掲げられています。
フェーズ1:フードとビューティが核になる2026年(タイ仏暦2569年)
第1フェーズでは、主にG階とM階を中心に、飲食・美容を軸とした大型テナントが投入されます。
– 「Lai Jie」:国際フードハブ
– コンセプトはバンコク旧市街のチャイナタウン「ヤワラート」の魅力を現代的に再構成
– G階とM階、約8,000平方メートル
– 100年以上の歴史を持つ老舗や、ヤワラートの定番店舗、SNS発の“バイラル系”フードなどを集積
– 投資規模は1億8,000万バーツ超
– 開業予定:2026年6月(タイ仏暦2569年6月)
– 「EVEANDBOY Café」:世界初のカフェ併設型店舗
– ビューティ・ライフスタイルブランドによる新業態
– M階に出店
– 開業予定:2026年6月(タイ仏暦2569年6月)
– 「TOFU SKINCARE MEGAMART」:タイ発ビューティハブ
– ASEANからグローバル市場へ拡大することを掲げる美容特化型メガストア
– 約7,200平方メートル
– プロダクトとイノベーションを“ビューティジャーニー”として体験させる構成
– タイ人・外国人消費者だけでなく、起業家にも開かれた「Beauty Experience Destination」と位置づけ
– 開業予定:2026年7月(タイ仏暦2569年7月)
– 「HOUSE OF LITTLEBUNNY」:アジア展開の旗艦店
– 1階にメガ・フラッグシップを出店
– 開業予定:2026年8月(タイ仏暦2569年8月)
既存テナントとしては、G階のStarbucks、3階のMomo ParadiseやRama 9 Kai Yang、4階のLet’s Relax Spa、786 Salon、MOS Dental Clinicなどが挙げられており、飲食・ビューティ・サービスが既に一定のバランスで入居しています。
日本人個人起業家にとっての意味合い
– 「Lai Jie」によって、観光客向けフードが大きな“核”になることで、周辺フロアの飲食・スイーツ・テイクアウト需要は一層厚みを増す可能性があります。
– 「TOFU SKINCARE MEGAMART」は美容関連起業家向けの“ハブ”として設計されており、ビューティプロダクトや関連サービスを持つ事業者にとって、コラボレーションやポップアップ出店などの余地が生まれる可能性があります。
– カフェ併設型ビューティストアや、アジア展開を視野に入れたファッションブランドの旗艦店が入ることで、「物販だけ」「飲食だけ」といった単機能ではなく、体験要素を組み込んだハイブリッド型コンセプトが求められることが読み取れます。
フェーズ2:ハイブリッド小売とナイトタイムエコノミー(2027年=タイ仏暦2570年1Q)
第2フェーズは2027年第1四半期(タイ仏暦2570年)に予定されており、テナントミックスを全面的に再構成します。計画されているカテゴリーは、
– アートトイ・ホビー
– ゲーミング・ガジェット
– ビューティ・ウェルネス
– セカンドハンドファッション・ブランド品
– コーヒー&ティーの専門店
– スペシャルティカフェ、バー、レストラン
– インターナショナル・ビュッフェ
など。特徴的なのは、「小売+ホールセール」のハイブリッドフォーマットが前提とされている点と、「オールデイ&オールナイト」の滞在型ハングアウトスポットを志向していることです。
ここから導ける、出店コンセプトの方向性
– 一点ものや限定品だけでなく、「まとめ買い」「卸的な買われ方」を意識した価格設定・パッケージ構成が重要になる可能性
– 日中のファミリーや観光客だけでなく、夜間の若年層・ナイトタイム利用を前提にした商品ラインナップ・サービス設計
– アートトイ、ゲーム、ガジェットといった“趣味性の高い分野”との相性が良いブランド・サービス
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3. PLATINUM PALAIS:ファッション系起業の「地域エコシステム」
THE PLATINUM SQUAREは「PLATINUM PALAIS」として再定義され、「Spectrum of Fashion」をコンセプトに、タイのファッション産業をグローバルステージで支える「リージョナル・ファッション・エコシステム」を掲げています。
– 投資規模:78億バーツ超
– 建物:48階建て
– リテールフロア:4フロア
– ホテル:MAMA Shelter Bangkok Platinum(500室超)、Ennismore(Accorとの合弁)が運営
– 敷地:約7ライ(約100,000平方メートル)
– 立地:プラトゥーナム交差点
– 開業予定:
– リテール部分:2028年(タイ仏暦2571年)
– ホテル:2029年(タイ仏暦2572年)
「ファッションのスペクトラム」というコンセプトからは、ハイエンドからストリート、デザイナーズからマス向けまで、幅広い価格帯とスタイルを包含することが意図されていると読み取れます。
ファッション系日本人起業家への示唆
– プラトゥーナム一帯は、既存のPlatinum Fashion Mallの存在も含め、もともとファッションホールセールの集積地です。その上に「リージョナル・エコシステム」としてPLATINUM PALAISが乗ることで、デザイナー、バイヤー、ホールセール事業者、D2Cブランドなどが一体となる“プラットフォーム”色が強まる可能性があります。
– オープンタイミングが2028〜2029年と中長期であるため、今から準備する個人起業家にとっては、ブランド育成やコラボレーションネットワーク作りの時間的余裕があります。バンコク内の他エリアからこのエコシステムへの“移転”“増床”を視野に入れた成長シナリオも描きやすくなります。
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4. ホテルとオフィスが支える「安定需要」と日本的視点
The Neighbourhood of Platinumには、リテールだけでなく、ホテルとオフィスが組み込まれています。
– ホテル客室数は3軒合計で1,300室超
– Novotel Bangkok Platinum Pratunam(288室)は、2026年第2四半期(タイ仏暦2569年)完了予定で大規模改装を進行中(客室、パブリックスペース、View Rooftop Barなど)
– Moxy Bangkok Ratchaprasong(504室)には、32階に新ルーフトップバー「Sato San」がオープンし、タイ・イサーンと日本文化の要素を料理・クラフト・空間で融合させたコンセプトを打ち出している
オフィスビル「Pier 111」の存在は、観光客に加えてビジネスパーソンの常時滞在を意味します。日本人起業家にとっては、
– B2Cだけでなく、B2B・コーポレート向けの需要(イベント、ケータリング、ウェルネスプログラムなど)
– 宿泊客を起点にした導線設計(ホテルからの徒歩圏・スカイウォーク経由で自然に流入する位置取り)
を織り込んだビジネスモデルが検討に値します。
「Sato San」が日タイ要素を掛け合わせたコンセプトであることは、日本的なコンテンツがローカル文化と組み合わさる可能性を示す象徴的な事例と言えます。
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5. 年表で整理する「動くべきタイミング」
公表されているスケジュールを、タイ仏暦と西暦を対比しながら整理すると、以下の通りです(タイでは西暦2023年が仏暦2566年に相当)。
– 2026年(タイ仏暦2569年)
– 6月:PLATINUM POP内「Lai Jie」、世界初「EVEANDBOY Café」オープン
– 7月:「TOFU SKINCARE MEGAMART」オープン
– 8月:「HOUSE OF LITTLEBUNNY」旗艦店オープン
– 第2四半期:Novotel Bangkok Platinum Pratunam改装完了予定
– 2027年第1四半期(タイ仏暦2570年)
– PLATINUM POP フェーズ2:テナントミックス刷新、ハイブリッド小売・ホールセールゾーン本格始動
– 2028年(タイ仏暦2571年)
– PLATINUM PALAIS リテールフロア開業予定
– 2029年(タイ仏暦2572年)
– MAMA Shelter Bangkok Platinum ホテル開業予定
実務的なポイント
– 2026〜2027年は、PLATINUM POPの立ち上がりとともに、「飲食・ビューティ・エンタメ系」の実験的コンセプトを投入しやすいタイミングと考えられます。
– 2028〜2029年にかけては、PLATINUM PALAISの開業でファッションエコシステムが本格化するため、ファッション/ライフスタイルブランドは逆算して準備を進めたい局面です。
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6. 個人起業家が押さえるべき3つの視点
1. ターゲットは「国際旅行者+現地モダンコンシューマー」
Platinum Groupは、現代的な消費者・ショッパー・観光客・起業家のニーズを同時に満たすことを明言しています。日本人向けニッチに閉じるのではなく、「国際客が直感的に理解できる価値提案」を設計することが重要になります。
2. “境界のない”業態設計
PLATINUM POPのコンセプトは、業種や時間帯、卸と小売の境界を意図的に曖昧にしています。物販+体験、飲食+コミュニティ、リテール+ホールセールなど、複数のレイヤーを組み合わせたビジネスモデルが求められます。
3. 長期のサステナブル成長を前提にした投資判断
Platinum Group自身が、段階的な開発と収益成長、資産価値向上を通じたサステナブルな事業運営を掲げています。短期回収型ではなく、ネイバーフッド全体の成熟とともにブランド価値を積み上げる視点が必要です。
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The Neighbourhood of Platinumは、バンコク中心部の一画を「未来型ネイバーフッド」として再定義しようとしています。
タイで個人起業を目指す日本人にとって、このエリアは単なる“出店候補地の一つ”ではなく、自らの事業をアジアの観光・消費の流れにどう位置づけるかを試される「実験場」になり得ます。
まずは、2026〜2027年のPLATINUM POP立ち上がり期に、このネイバーフッドの空気感・客層・消費行動を自らの目で確かめ、そのうえで中長期のポジショニングを描くことが、次の一歩になるはずです。
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参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3241843/platinum-group-unveils-the-neighbourhood-of-platinum-rebranding-the-market-to-platinum-pop
