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2026年1月12日

タイで個人起業する日本人へ──Honda UC3とEV3.5の商機

タイで個人起業を目指す日本人へ

ホンダ電動バイク戦略に見える新たな商機

タイHonda初の電動バイク「UC3」が意味するもの

タイの二輪市場で圧倒的な存在感を持つThai Hondaが、同国で初となる自社の電動バイク「UC3」を投入しました。設計はタイ人エンジニア、製造もタイ国内工場。タイを電動二輪の輸出拠点と位置づける戦略の一環であり、年内にはベトナムへの輸出も始める計画です。

同社は、内燃機関(ICE)モデルと電動モデルを合わせ、年内に11モデルを市場投入する方針を示しています。その中核の一つとなるUC3は、価格132,000バーツで、1回の充電で122kmの走行距離をうたいます。タイの一般的な日常利用をカバーしうる実用的なレンジであり、ビジネス用途にも耐えうるスペックといえます。

インフラ面では、Thai Hondaは全国での充電ネットワーク拡大を掲げ、今年中に230エリア・460カ所へ充電拠点を増やす計画です。テスコ・ロータスやCentral Groupと組み、コミュニティモールへの設置を進める方針で、充電サービスへの投資額は1億バーツ規模とされています。さらに、バッテリーリサイクル工場の設立可能性についても、ホンダのグローバルな「循環型バリューチェーン」戦略の下で検討を進めています。

タイで個人事業として動き出そうとする日本人にとって、これは単なる新車発表ではありません。

「製品(電動バイク)」「インフラ(充電網)」「循環(リサイクル)」という三層のエコシステムを、ホンダがタイ国内で本格的に整え始めたシグナルです。この“幹”に、どのような枝葉のビジネスを個人として付け足せるか――それが起業戦略の出発点になります。

EV3.5スキーム:補助金と減税がつくる事業環境

Thai Hondaは、タイ政府のEV普及促進策「EV3.5スキーム」への参加承認を得ています。この制度は、以下のようなインセンティブを提供します。

– 電動バイク1台あたり最大1万バーツの補助

(車両価格15万バーツ未満かつ3kWh以上のバッテリー容量が条件)

– 2024年〜2027年にかけての税制優遇措置

(電動車両の国内生産・普及の後押しが目的)

UC3の価格は132,000バーツで、補助金対象となる価格帯にあります。補助金と税優遇で、電動バイク導入のハードルは確実に下がります。

日本人の個人起業家にとっての意味合いは二つあります。

1. 自らの事業用車両コストの圧縮余地

配達、訪問サービス、移動を伴う個人事業などで、電動バイク導入コストを抑えられる可能性があります。

2. 電動バイク利用を前提にしたサービス設計がしやすくなること

「充電時間」や「走行レンジ122km」という制約を前提に、料金体系やルート設計、サブスクリプション型サービスなどを組み立てることで、差別化しやすいサービスモデルを描きやすくなります。

EV3.5スキームは2024〜2027年という明確な時間軸を持つため、この期間を“先行者メリットを得る4年間”と位置づける発想が有効でしょう。

市場規模とマクロ環境:強いボリューム、重い家計

Thai Hondaによれば、タイ国内の二輪販売台数は、タイ暦2566年(西暦2023年)に173万台に達しました。2026年の市場規模は168万〜173万台と見込まれており、大きく縮小するシナリオは想定されていません。

一方で、同社トップは以下のような逆風も指摘しています。

– 家計債務の高さ

– 景気減速

– 不良債権リスクを警戒した銀行の融資姿勢の厳格化

こうした要因から、Thai Honda自身の販売台数見通しは、今年は136万〜140万台と、前年の140万台からわずかな減少を見込んでいます。総量としては大きいが、消費マインドは慎重——という構図です。

日本人の個人起業家がここから読み取るべきは、「ボリューム市場だが、高額な一括支出には慎重な顧客が多い」という現実です。分割払いに依存しにくい価格帯のサービス、小口・高回転型ビジネス、継続課金型モデルなどを設計した方が、マクロ環境と整合しやすいと言えます。

日本人個人事業が狙えるニッチ領域

Thai Hondaの動きと政府政策を踏まえると、個人レベルでも現実的に検討できるニッチは複数見えてきます。

1. 充電インフラ周辺のサービス

充電拠点は今年中に230エリア・460カ所に拡大予定とされ、コミュニティモールに重点的に展開されます。この“場”の拡大は、次のような周辺ビジネスを生みやすい土壌です。

– 充電待ち時間を前提にした小規模サービス

(例:短時間利用型のワークスペース、簡易な物販・飲食など)

– 日本語・英語対応を強みにした、外国人利用者向けサポートサービス

– 充電拠点の運営・保守を受託する形のマイクロビジネスの可能性

タイ側がどこまで外部委託や提携を広げるかは現時点では不透明ですが、拠点拡大の事実自体が「物理的な接点の急増」を意味し、ここに人の流れが生まれるのは避けられません。この“人の流れ”をどう自分の事業に取り込むかが鍵となります。

2. 電動バイクを組み込んだモビリティ型ビジネス

UC3は1回充電で122kmというレンジを持ち、補助金により導入コストを抑えやすい条件が整いつつあります。これを前提に、個人規模でも成立し得る事業の方向性としては、たとえば次のようなものが考えられます。

– 電動バイクを核にした小規模フリート運用

(少数台から始める配達代行や訪問サービスの多拠点展開など)

– 「静か・排気ガスが出ない」といった電動バイクの特徴を訴求点としたサービス設計

– タイ人利用者に加え、日本人駐在員・長期滞在者を視野に入れたニッチなモビリティサービス

ここで重要なのは、「車両ビジネス」に飛び込むのではなく、「電動バイクを前提に設計したサービスビジネス」として位置づける視点です。車両はあくまで手段であり、本体はルート設計、料金体系、運用ノウハウといった“ソフト”です。

3. サステナビリティ文脈を意識した小規模ビジネス

Thai Hondaは、バッテリーリサイクル工場の設立可能性を検討しているとしています。まだ計画段階ですが、「循環型バリューチェーン」というキーワードは、サステナビリティに配慮した事業への評価軸が今後高まることを示唆します。

個人事業レベルでも、

– 電動バイク利用を前提とした「環境配慮型サービス」であることの明示

– バッテリーや部品の扱いに関する啓発・情報提供型の小規模メディアやコンサルティング

といった切り口は、将来的な評価につながりやすい可能性があります。サステナビリティは大企業だけのテーマではなく、個人のブランド形成にも直結する時代になりつつあります。

グローバル戦略の中のタイと、起業家の時間軸

ホンダは2025年に世界で2,100万台の二輪を販売し、シェア40%を確保したとされています。2030年には、内燃機関と電動モデルを合わせて6,000万台という野心的な目標を掲げています。

その中で、タイは電動バイクの生産・輸出拠点としての位置づけを強めつつあります。タイ国内で設計されたUC3を、タイ工場で生産し、ベトナムへ輸出する——この流れは、タイが単なるローカル市場ではなく、周辺国を含めた広域市場のハブとして扱われていることを意味します。

日本人の個人起業家にとって重要なのは、次の二点です。

1. タイ国内需要だけを見ない発想

今後、タイ発の電動バイクが周辺国に広がるなら、その運用ノウハウやサービスモデルにも「輸出可能性」が生まれます。まずタイで小さく始め、うまくいったモデルを周辺国に横展開する構想も描きやすくなります。

2. 2030年という中期ゴールを逆算した事業設計

2030年の6,000万台目標に向け、電動化は確実に進みます。2024〜2027年のEV3.5スキーム期間は、いわば“助走期間”です。この4年間で、電動バイクを前提としたサービスモデルを試行し、2030年に向けてスケール可能な形に磨き上げていく——そんな時間軸での発想が有効です。

タイ暦2566年(西暦2023年)時点で、タイの二輪市場は依然として巨大でありながら、家計債務や景気減速といった制約も抱えています。その中で、Thai Hondaと政府の電動化戦略は、「量はあるが財布のひもは固い」市場を前提にした、次世代モビリティへのシフトを加速させようとしています。

日本人の個人起業家に求められるのは、完成車ビジネスに正面から参入することではなく、この大きな幹に寄り添いながら、電動バイクという新しい前提条件を活用した小さく鋭いサービスを設計することです。

UC3とEV3.5スキームは、そのための「現実的な足場」を、タイに用意しつつあります。

Photos provided by Pexels
参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/motoring/3172450/thai-honda-debuts-local-electric-motorcycle-model

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AI リポーター
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