タイで個人起業するなら知っておきたい「半分持ちます」政策の読み方
タイでの個人起業を考える日本人にとって、政府の景気刺激策をどう読むかは、意外に重要な経営判断材料になる。タイでは仏暦が使われており、仏暦2566年は西暦2023年に相当するが、この前後の局面で示された政府のスタンスを押さえておくことは、今後の事業計画にも生きてくる。
ここでは、タイ政府のコペイメント(共同負担)型政策「Khon La Khrueng Plus(コン・ラ・クルン・プラス/Let’s Go Halves)」に関する事実を整理しつつ、個人起業家にとっての示唆を考えてみたい。
「Khon La Khrueng Plus」:政府が期待した「消費の起爆剤」
タイ内閣は、「Khon La Khrueng Plus」の期限を前に、国民に対し「残っている枠を使い切るように」と強く呼びかけた。政府副報道官によれば、この政策は「Let’s Go Halves(半分ずつ負担しよう)」という名前の通り、政府と国民が一緒に支出を担うコペイメント方式の制度だ。
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Base Documentが示している事実は、きわめて限定的だが、以下の点は明確である。
– 対象は2,000万人の参加資格を持つ国民
– そのうち、実際に割り当て分を使い切ったのは約700万人にとどまる
– およそ60億バーツ(6 billion baht)が未使用のまま残っている
– 政府は、この制度を通じた支出が「景気刺激」に資すると期待している
– プログラムには明確な期限があり、「水曜日」で終了するため、その前に使い切るよう内閣が促している
つまり、政府としては「期限付きの枠」を設け、国民の消費行動を前倒し、あるいは押し上げることで景気を下支えしようとした構図が見えてくる。
数字から読み解く「タイの消費」と起業家への示唆
事実として、2,000万人のうち7,000万人……ではなく7百万人しか枠を使い切っていない。利用率は約35%にとどまり、残り65%の参加資格者は十分に活用していない計算になる。また、60億バーツもの資金が「消費されないまま」残る見込みである。
この数字は、個人起業家にとって少なくとも三つの示唆を持つ。
1. 政府のインセンティブだけでは消費は動き切らない
消費者にとって有利な制度であっても、参加者全員が必ずしも動くわけではない。情報の浸透度、制度の分かりやすさ、手続きの手間など、さまざまな要因が利用率を左右する。
起業家にとって重要なのは、「制度があるから自動的に客足が伸びる」とは考えないことだ。制度をきっかけに、どれだけ自社の顧客に対して「わかりやすく、使いやすく」見せられるかが問われる。
2. 期限直前に需要が集中するリスクとチャンス
政府がわざわざ「期限前に使い切ってほしい」と呼びかける背景には、残高が相当量残っているという事情がある。期限付きの支援策では、多くの国・地域で「締切間際の駆け込み需要」が起こりやすい。
事実として、タイ政府は「水曜日」という明確な最終期限を示し、その前に消費を促した。個人事業主としては、こうした期限前後に需要が一時的に跳ね上がる可能性があると想定し、仕入れや人員配置を柔軟に組んでおく必要がある。
3. 「未使用のまま終わる消費可能額」が存在するという現実
60億バーツという未使用額は、そのまま「本来発生し得たが、実際には発生しなかった消費ポテンシャル」とも言える。
自分の店やサービスが、その「潜在的な消費」の受け皿になっていたかどうか――これは、タイでビジネスをするうえでの一つの評価軸になる。制度終了後も、類似の政策が出てきた際に「どうすればこのポテンシャルを獲得できるか」を常に考えておきたい。
タイで個人起業する日本人が取るべき三つのスタンス
Base Documentが伝えているのは、制度の細部ではなく、「政府は消費を刺激したいが、参加者の多くはまだ十分に動いていない」という構図だ。ここから導ける、タイで起業する日本人向けの実務的なポイントは次の三つである。
1. 政策の「期限」と「残高」をマーケティングに組み込む
政府が「残りのバランスを使い切るように」と呼びかけている以上、利用者には「まだ枠が残っている」「期限までに使わないと消えてしまう」という意識が生じる。これは、ビジネス側から見れば強力なマーケティング素材になり得る。
– 店頭やSNSで「政府支援の残高をお持ちの方へ」といった訴求をする
– 期限直前に「使い忘れ防止」をテーマにしたキャンペーンを打つ
– 「日常の少額消費」で使いやすい商品・サービスを前面に出す
といった工夫は、Base Documentが示す範囲の事実と矛盾しない形で考えられる。
重要なのは、制度そのものに依存するのではなく、「制度をきっかけに顧客との接点を増やす」発想だ。
2. 政府の景気刺激の方向性を「風向き」として捉える
政府が「景気刺激」を目的にコペイメント型の制度を打ち出したという事実は、少なくとも当局が「家計消費の下支え」を重視していることを意味する。
個人起業家としては、
– 当面、消費関連分野には政策の追い風が吹きやすい
– 政府の支出が直接乗りにくい事業でも、「消費喚起」が最終ゴールであれば、関連サービスとして位置づけられる余地がある
といった視点で、自身のビジネスモデルを点検してみる価値がある。
タイでは仏暦2566年=西暦2023年前後にこうした政策が展開されたという事実を踏まえ、今後も同様の方向性が続くのか、変化するのかをウォッチすることが、リスク管理につながる。
3. 一時的な「追い風」に依存しない収益構造を設計する
Base Documentによれば、「Khon La Khrueng Plus」には明確な終了期限があり、水曜日でプログラムは打ち切られる。つまり、この種の政策は本質的に「一時的な追い風」にすぎない。
起業家にとって重要なのは、
– 政策による一時的な売上増は「ボーナス」と位置づける
– 期限後の通常需要をベースにした損益計画を組む
– 政策終了後もリピートが見込める顧客体験を提供する
といった中長期志向だ。
政府の「半分持ちます」というメッセージは心強く見えるが、それに事業モデルを寄せすぎれば、制度終了とともに売上も消える構造になりかねない。
終わりに:数字の裏側を読む力が、タイ起業の「地力」になる
「Khon La Khrueng Plus」は、タイ政府が国民に対しコペイメント方式で消費を促し、景気刺激を狙った政策だ。その結果として、2,000万人の参加資格者のうち約700万人しか枠を使い切らず、60億バーツが未使用のまま残りかねないという構図が浮かび上がった。
タイで個人起業を目指す日本人に求められるのは、このような数字から、
– 政府が何を重視し、どこに資金を投じているのか
– 消費者はどう反応し、どこに「使われないお金」が残っているのか
– 自分のビジネスは、その流れのどこに位置づけられるのか
を冷静に読み解く力である。
政策は「追い風」にも「ノイズ」にもなる。仏暦2566年(西暦2023年)前後のタイで示されたこの一例を、単なるニュースとして流すのではなく、自身の事業戦略を磨くための材料として蓄積しておきたい。
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参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3166619/copayment-scheme-wraps-up
