タイとニュージーランドの関係強化が、タイで起業する日本人にどんなビジネス機会をもたらすかが見えつつある。バンコク—オークランド直行便の再開と、2045年までに貿易を3倍にするという合意は、モノと人の往来を前提に事業を組み立てる個人起業家にとって、新しい選択肢になりうる動きだ。今決まっている事実を押さえ、自分の事業アイデアとどう接続しうるかを考えておきたい。
バンコク—オークランド直行便再開の意味
タイ国際航空(Thai)が、バンコクとオークランドを結ぶ直行便を来年再開する。タイ政府のラチャダー・ダナディレク報道官は、貿易や観光、投資、人の移動の促進を狙う戦略の一環だと説明している。
この路線は、新型コロナウイルスの世界的な流行で国際線が止まった際に運休となった。30年以上運航してきた直行便が途絶えていた経緯があり、復活の政治的・経済的意味は大きいといえる。
ニュージーランドのクリストファー・ラクソン首相は、タイのフラッグキャリアの復帰を歓迎したうえで、「観光と貿易にとって朗報だ」と述べた。アジア各地へバンコク経由でつながることで、重要な航空貨物の回廊も回復すると位置づけている。
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タイに住む日本人の個人起業家にとっては、「ニュージーランドとアジアを結ぶハブとしてのバンコク」という絵が、少し具体性を帯びてくる。人の移動だけでなく、航空貨物を前提にしたビジネスやサービス設計を検討しやすくなる局面だと考えられる。
2045年に向けた貿易3倍の青写真
両国首脳は、戦略的パートナーシップの立ち上げに合意した。関係を一段深める枠組みであり、その柱の一つとして貿易額を2045年までに3倍にする目標を掲げている。
貿易目標の金額は、発表者によって数字に差がある。タイ側の説明では75億米ドル(2,460億バーツ)、ニュージーランド首相は135億ニュージーランドドル(2,630億バーツ)とした。いずれにせよ、現在の水準からの大幅な積み増しを想定しているとみられる。
共同声明では、ニュージーランドがタイの経済協力開発機構(OECD)加盟の動きを支持する姿勢も示した。タイが国際的な経済秩序への関与を深めようとする方向性が、改めて確認された形である。
貿易拡大と国際枠組みへの接近は、通常、中長期的にはルールの透明性や手続きの標準化につながりやすい。タイでの起業環境も、2045年に向けて徐々に変化していく可能性があり、長期の事業計画を描くうえで意識しておきたい。
日本人個人起業家に開けるニッチ
こうした動きは、一見すると国家間のマクロな話に見える。だが、個人レベルのビジネスにも、いくつかの着眼点が生まれていると考えられる。
第一に、バンコク—オークランド直行便の再開で、人とモノの流れが読みやすくなる。フライト再開のタイミングや運航頻度の変化は、サービスの立ち上げ時期やターゲットの絞り込みに直結する情報となるはずだ。
第二に、2045年までの貿易3倍という長い時間軸が示された点である。すぐに大きな変化が起こるとは限らないが、「タイとニュージーランドの間で、今後20年前後、ビジネスを増やしていこう」という意思が政治レベルで共有されたという意味は重い。
個人起業の視点では、両国間の取引や往来を支える「周辺サービス」にチャンスが生まれやすい。たとえば、タイとニュージーランドの企業や人をつなぐ際のコミュニケーション支援や、商習慣の違いを埋めるような役割は、小回りの利く事業として設計しやすい領域といえる。
さらに、バンコクがアジア各地への乗り継ぎ拠点として機能することを踏まえると、「ニュージーランド—タイ—他のアジア諸国」という三角の動線も意識しうる。日本人としての言語や文化のバックグラウンドを、どの方向の橋渡しに生かすかを具体的に描くことが、差別化の起点になるだろう。
長期シナリオを前提にした事業設計
今回の直行便再開や貿易目標は、「来年」と「2045年」という、短期と長期の二つの時間軸を示している。個人起業家は、このズレを前提に戦略を組み立てる必要がある。
直近1〜2年では、フライト再開に伴う人流・物流の変化を細かく観察し、小さく試せるサービスやプロジェクトを設計する段階となる。たとえば、ニュージーランドとタイを行き来するプレーヤーの具体的なニーズを丁寧に拾い、試験的なサービス提供を通じて検証していくアプローチが現実的だ。
一方、2045年までの長期では、タイが国際的な経済規範に近づいていく可能性も念頭に置きたい。規制や制度の変化に翻弄されるのではなく、「変わっていく前提」を織り込んだビジネスモデルを考えることで、環境変化を成長の追い風に変えやすくなる。
タイとニュージーランドの関係強化は、日本人起業家にとって直接のニュースではないように見えるかもしれない。ただ、タイを拠点に事業を組む以上、こうした二国間の動きを自分のビジネスの文脈に引き寄せて考えられるかどうかが、数年後のポジションを左右する。ニュースを「遠い話」と切り捨てず、事業計画の前提条件として一度整理しておく価値は大きいと感じる。
