UOBがASEAN・グレーター・チャイナ統括にタン・チュン・ヒン任命、タイ拠点強化への布石

シンガポールの銀行UOB(ユナイテッド・オーバーシーズ銀行)が、ASEANと中国本土を束ねる新たな責任者を指名した。タイ子会社のトップを長年務めた人物が地域全体を統括することで、バンコク発のビジネスも含めた「ASEAN⇔中国」の資金・ビジネスの流れが一段と太くなる可能性がある。タイで小さく起業する日本人にとっても、銀行との付き合い方を考え直すタイミングといえる。

UOB新体制とタイ拠点の位置づけ

UOBは9月1日付で、タン・チュン・ヒン氏を「ASEANおよびグレーター・チャイナ」の責任者に任命すると発表した。タン氏は現在、UOBの副チーフ・リスク・オフィサーであり、経営の中枢に近い立場から一段と広い役割を担う形だ。

新たな役割では、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、中国本土の完全子会社に加え、香港、台湾の支店を含む地域ビジネスを統括する。ASEANとグレーター・チャイナを一体として捉え、域内のクロスボーダー取引を取り込もうという狙いがにじむ。

タン氏は2016年からUOBタイの社長兼CEOとして陣頭指揮を執ってきた人物である。バンコク・ポスト紙から「2023 CEO of the Year Award for Innovative Financial Visionary」を授与されるなど、タイでの実績も高く評価されている。

UOBは同時に、外国直接投資(FDI)アドバイザリー部門もタン氏の管掌とした。この部門はASEANとグレーター・チャイナにまたがるエコシステム・パートナーや業界ネットワークと企業をつなぎ、クロスボーダーの成長機会をつかむ支援を行うという位置づけだ。

直近6カ月間だけで、同部門は300件超の国境をまたぐ事業拡大計画を支援した。想定投資額は56億シンガポールドル(約43億8,000万米ドル)にのぼるという。1件あたりの規模を考えれば中堅以上の案件が中心とみられるが、銀行側がこの分野に相当のリソースを割いていることがうかがえる。

日本人のタイ起業と銀行活用のポイント

UOBがASEANとグレーター・チャイナの結びつきを強めようとしている背景には、域内のクロスボーダーの資金や事業の流れが拡大している現実がある。タイでの個人起業や小規模ビジネスであっても、仕入れ先や販売先が中国や周辺国に広がる構図は今後さらに一般的になるとみられる。

FDIアドバイザリー部門は主に企業向けのサービスと考えられるが、その機能は小規模事業者にとっても参考になる。エコシステム・パートナーや業界ネットワークへの「接続」を銀行が担うという発想は、単なる口座開設や融資だけに銀行を限定しない視点を与えるからだ。

タイでの起業準備やビジネスモデルの検討段階で、次のような観点から銀行を選び、相談してみる価値があるだろう。

  • ASEANと中国本土、香港、台湾にまたがる送金や決済のしやすさ
  • 取引先候補を含む業界ネットワークとの接点づくりをどこまで支援してくれるか
  • 将来、周辺国へ商圏を広げる際の支援窓口やアドバイザリー機能の有無

一方で、小規模な個人ビジネスがすぐにFDIアドバイザリー部門の直接支援を受けられるとは限らない。ただ、銀行側がクロスボーダー支援機能を組織として整備しているかどうかは、将来の成長余地を見据えた「インフラ選び」として無視できない要素になる。

クロスボーダー時代の付き合い方

今回の人事は、タイを含むASEANとグレーター・チャイナを1つのビジネス圏として捉える銀行側の姿勢を象徴する出来事である。タイでの起業は、そうした広域な回廊の「ハブ」に立つことでもあると意識した方が戦略が立てやすくなる。

起業家にとっては、銀行を「口座を持つ相手」から「成長のルートを一緒に設計する相手」として位置づけ直すことが重要だろう。UOBを含め、どの銀行がどの地域を強みとしているのか、どの部門がクロスボーダーの相談窓口になり得るのかを早い段階で確認しておきたい。

ASEANと中国の資金・ビジネスの流れが太くなるほど、銀行間の競争も激しくなるとみられる。その流れをうまく利用できるかどうかが、タイでの小さな起業が次のステージに進めるかどうかを左右する局面が増えていくはずだ。

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AI リポーター
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