タイEV輸入税を2027年に引き上げへ CBU重税化と部品需要

タイ政府が電気自動車(EV)の輸入エキサイズ税を2027年初めから引き上げる方向で準備している。完成車輸入に頼るビジネスには逆風だが、部品や現地生産に絡む分野には追い風にもなりうる。タイでEV関連の個人起業を検討する日本人にとって、税制の転換点になる。

EV輸入税引き上げの全体像

タイ財務省は、タイ国内に生産拠点を持たない完成車輸入(CBU)のEVに対し、エキサイズ税率を引き上げる方針だ。現在10%の税率は、2027年1月1日から引き上げられる予定である。

この動きには2つの目的があるとされる。すでにタイで工場やサプライチェーンに投資した企業の利益を守ることと、なお輸入に依存する自動車メーカーに対し、現地生産拠点を設ける交渉を加速させることだ。

背景には、4〜5年前に打ち出したEV戦略がある。ベトナムやインドネシア、マレーシアなどの競合に、地域の自動車ハブの地位を奪われないようにする狙いだった。

政府はその一環として、EV3.0パッケージという2年間の景気刺激策を実施した。EV購入者への直接補助金とエキサイズ税の減免を組み合わせ、市場を立ち上げつつ、各社にタイでの生産拠点設置を促した施策である。

インセンティブを段階的に縮小するEV3.5パッケージへ移る過程で、中国の自動車メーカー8社がタイでの工場建設を決めた。各工場は年10万台規模の生産能力を持ち、国内市場に加え、日本や英国、オーストラリア、マレーシアなど右ハンドル市場への輸出を想定した設計になっている。

今回の輸入税引き上げは、こうした「呼び水」段階から、「タイ国内への定着と裾野産業の拡大」段階へ移るシグナルといえる。

三段階エキサイズ税と「Made in Thailand」

新たなエキサイズ税は三つの区分(ティア)で構成される。もっとも低い税率となるティア1は、タイ国内に生産拠点を持ち、「Made in Thailand」のローカルコンテンツ要件を満たすメーカーに適用される。

ティア2は、タイに工場はあるものの、輸入部品への依存度が高い企業が対象となる。完成車を海外からそのまま持ち込むCBU車で、タイに生産拠点を持たないケースにはティア3が適用され、もっとも高い税負担となる。

同時に政府は、「Made in Thailand」の中身となるローカルコンテンツの算定基準も見直す考えだ。現行の世界貿易機関(WTO)の基準では、40%以上のローカルコンテンツが求められているが、その計算には利益や賃金、水道光熱費が含まれる。

これらのコストは最大で15%程度を占めうるとされる。そのため、実際にどれだけ国産の自動車部品を使っているかを、必ずしも正確に反映していないという弱点がある。

政府はこの点を改めるため、エキサイズ税を主な政策手段とし、「Made in Thailand」基準の下で新しいローカルコンテンツ要件を導入する方針だ。より多くの国産部品の使用を重視する方向である。

日本の中小企業にとっては、この「Made in Thailand」要件をどう満たすかが、今後の取引条件になりやすい。タイ側の組立メーカーから見れば、輸入品に頼らず、タイで生産された部品を供給してくれるパートナーほど税負担を軽くできる構図になる。

CO₂基準へのシフトと技術中立

自動車エキサイズ税の今後の方向性について、財務省のラワロン・サングスニット常任書記官は、技術別の税率設定はしない考えを示している。バッテリー式EV(BEV)やレンジエクステンダーEV、ハイブリッドといった技術ごとに税率を分けることはしないという。

急速な技術革新のペースを踏まえ、政府は共通の基準としてCO₂排出量を重視する。CO₂排出が少ない車ほど、低い税率の対象となる仕組みを想定している。

これは、特定の方式に賭けるのではなく、「よりクリーンな車」を広く優遇する発想である。結果として、どの技術を採るにせよ、タイ市場で競争力を持つには、排出量を抑える設計が欠かせなくなる。

EV関連で起業を考える日本人にとっては、「EVだから優遇される」という単純な構図ではなく、「どれだけCO₂を減らせるか」がビジネス価値の軸になる。フリート向けに低排出の車両を提案するサービスや、省エネ改良を支援するようなビジネスには、政策面での追い風が想定される。

日本人起業家が押さえるべきポイント

まず完成車の輸入ビジネスだが、2027年以降、タイに生産拠点を持たないCBUのEVは、エキサイズ税率の引き上げ対象となる。仕入れコストの上昇要因となりうるため、個人でEVを輸入して販売する形のビジネスは、価格設定の余地が狭まる可能性が高い。

一方、タイに工場を構えるメーカーにとっては、「Made in Thailand」要件を満たし、ティア1に入ることが利益率に直結する。そのため、国産部品の調達先を増やしたいニーズは高まりやすい。

日本の中小部品メーカーやエンジニアが、タイ側の組立工場と組んで現地生産を立ち上げれば、税制面でのメリットを共有できる構図になる。金額や優遇内容は具体化を待つ必要があるが、「輸入販売」から「現地調達・現地生産」へのシフトが大きな潮流であることは読み取れる。

ローカルコンテンツの計算方法が変わる点も重要だ。これまでは利益や人件費、水道光熱費によって40%の基準を満たしやすい面があったが、今後は実際の部品供給の比重がより厳しく問われる。タイ工場に小ロットでも安定的に部品を供給できる体制を組めるかどうかが、中小事業者にとっての勝負どころになりそうだ。

市場構造という意味では、中国勢と日本勢の立ち位置も無視できない。EV3.0とEV3.5の期間、日本の自動車メーカーは、バッテリーEV技術は未成熟だと判断し、本格展開を見送った。

その代わり、ハイブリッドや水素技術に力を入れ、既存ブランドへのタイ人消費者のロイヤルティを高める戦略を採った経緯がある。その結果、EV投資の初期の波には乗り遅れたとされる。

一方で、中国メーカーの中には、価格競争の激化で財務的なリスクを抱える企業も出てきている。財務省は、今回のエキサイズ税引き上げとローカルコンテンツ見直しが、タイ国内の投資環境を持続可能なものとして維持する狙いだと説明する。

日本ブランドが本格的にEV投資に動き出すと、タイ国内でのサプライヤー探しや技術パートナー探しが加速する可能性がある。すでにタイで事業をしている、あるいはこれから進出する日本人起業家にとって、そのタイミングをどう捉えるかが重要になる。

契約面では、2027年1月以降の税率変更リスクを、販売価格や仕入れ条件にどう織り込むかをあらかじめ整理しておきたい。とくにEVを扱うディーラー契約や、輸入スキームを組む場合には、エキサイズ税の区分(ティア1〜3)と「Made in Thailand」要件の最終的な仕様を確認したうえで、期間や価格条項を設計する必要がある。

タイ政府のEV戦略は、「投資を呼び込む段階」から「サプライチェーンを育てる段階」へ、今後さらに進んでいくとみられる。その流れを前提に、自らのビジネスモデルを「輸入依存」から「タイ国内の価値創出」へどこまで寄せられるか。個人起業の成否を分けるのは、この発想の転換になりそうだ。

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AI リポーター
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