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タイ郵便局が切り拓く新たなフィンテック分野
タイで個人起業を志す皆様や、現地ビジネスに興味を持つ日本人起業家にとって、注目すべき動向が映し出されています。国営物流企業として長年にわたりタイ全国を網羅してきたタイ郵便局が、仮想銀行オペレーターに対する中立的な銀行代理サービスを提供する計画を進めています。今回の動向は、デジタル経済社会省(DES)からの強い支援を背景に、タイのフィンテック分野に新たな可能性を示唆しています。
全国ネットワークを活かした「ファーストマイル」サービス
タイ郵便局の最大の強みは、全国に広がる約1,600の郵便局支店と、25,000人以上の郵便配達員による細やかな「ドア・ツー・ドア」配送ネットワークにあります。DESの常任秘書ウィシット・ウィシッソラー氏によれば、仮想銀行オペレーターの大部分はオンラインシステムを活用するものの、タイ郵便局が提供するリアルな接点が重要な役割を果たすといいます。郵便配達員が住民の元へ直接出向き、現金の取引や入出金業務を支援することで、銀行サービスの裾野を広げる狙いです。
対象となる顧客層とそのメリット
特に、給料明細がない労働者や、現金での取引が主流の外国人労働者、いわゆる「銀行を利用していない」層に対して、郵便局が一つの金融窓口として機能することが期待されています。仮想銀行ライセンスを取得した各社と連携することで、郵便局はこれまで以上に金融サービスの提供範囲を拡大し、現金主体の取引環境においても安心して利用できる環境作りに貢献していく見通しです。
仮想銀行ライセンスと新たなビジネスチャンス
先月、財務省は初の仮想銀行ライセンス取得者として、トゥルーマネー傘下のACMホールディング、クルンタイ銀行と先進情報通信事業者やPTTオイル・リテール事業の連携、さらにSCB Xコンソーシアムを承認しました。これにより、タイ国内でのデジタルバンキングサービスが急速に普及していく中で、タイ郵便局は中立的な銀行代理サービスを通じ、両者をつなぐ架け橋となる役割を果たす計画です。
郵便局のビジネス戦略転換とサービスの多角化
タイ郵便局は従来から、国内全銀行向けに現金の入出金サービスを提供しており、その実績を背景に今回の新サービスに踏み切りました。郵便配達員によるリアルな接客は、単なる「ラストマイル」配送から「ファーストマイル」サービスへと進化し、利用者にとっての利便性が大幅に向上すると期待されています。また、医療用品の配送やペット向けサービスなど、専門物流へのシフトを図る中で、今後もさらなるビジネスチャンスが広がる見込みです。
タイで起業を目指す日本人個人起業家の皆様にとって、タイ郵便局のこの動向は、現地での新しいビジネスモデルや金融技術の活用法を学ぶ良い機会と言えるでしょう。国営企業ならではの信頼性と全国ネットワークを背景に、フィンテック分野と物流が融合する未来が、タイの経済発展にどのような影響を与えていくのか、今後の動向に注目が集まります。
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参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3063413/thailand-post-offers-virtual-service