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2025年11月6日

タイで個人起業する日本人向け:EV・水素時代の事業戦略

タイで個人起業を狙う日本人へ:EVと水素、二正面の変化に備える

タイ仏暦2566年(西暦2023年)、東京で開かれたJapan Mobility Showは、日本勢が電動化の主戦場に本格参戦する転機となった。中国勢の先行を認めつつも、信頼性・ライフサイクル設計・リサイクルを武器に「追いつき、勝つ」戦略が明確化した点は、タイで事業を立ち上げる個人にとっても実務的な示唆が多い。発売時期、技術軸、顧客体験の変化を時間軸で読み解き、どこに機会があるのかを整理する。

2027年、ホンダEVがタイ投入予定—逆算で準備する3年計画

ホンダはコンパクト、セダン、SUVを含む新世代EV5車種を発表し、日本と英国でのデビューの翌年に、2027年にタイを含むアジア市場へ導入する方針を示した。Aseanでは現状、ホンダ自身が「ハイブリッドの方がEVより売れている」と認めている。すなわち、短期(今〜2026年)はハイブリッドを主戦場に、2027年以降にEV比率が上がる前提で、以下のように段階的に準備するのが筋だ。

– 2023–2025年:ハイブリッド需要を軸に顧客接点を拡大。EV導入を見据え、顧客教育や運用サポートの型を作る。

– 2026年:ソフトウェア中心の体験設計に対応できる体制へ移行。継続アップデートを前提とした運用・説明のプロトコルを整える。

– 2027年:コンパクトEVの投入を機に、EV顧客のライフサイクル全体(購入後の価値維持や再利用)まで視野を広げる。

ホンダはOSを併せて公表し、個別ユーザーに最適化し続けるソフトウェア更新を打ち出した。これにより「売って終わり」ではなく、「使いながら進化させる」前提に市場が移る。個人事業でも、納車後の継続コミュニケーションやアップデートの伴走支援といった長期関係の設計が要になる。

信頼性・ライフサイクル・リサイクル—日本勢の競争軸と周辺ニーズ

日本勢は「信頼性」と「ライフサイクル価値」を前面に出す。ホンダは、発売後も継続的に進化し、バッテリー回収・リサイクルまで含めた循環を掲げる。事業機会は販売前後の両端に生まれやすい。

– 購入後価値の維持:継続アップデートや状態管理を理解し、顧客の価値維持を支える説明・運用の支援ニーズが高まる。

– 回収・再資源化の接点:素材・バッテリーの再利用を見据え、ライフエンド時の適切な取り扱いと窓口整備が求められる。

一方で、Aseanでのバッテリー生産は「規模が要件」であり、地域内製造は検討段階とされる。パートナーとして中国CATLとの協業にも触れられた。すなわち、電池の上流は当面流動的で、現地で確実に積み上げられるのは「顧客の安心・運用・価値維持」という下流の実務である。

トヨタとBMWが示す多様化—単一解ではなく「共存」前提の設計を

トヨタはレクサスの次世代EVコンセプト「LF-ZC」を公表し、航続約1,000kmを掲げて2026年に投入予定とした。また、ステアリングのない自動運転の子ども向け「Kids Mobi」、段差や不整地を想定した四脚の自立走行チェア「Walk Me」、誰もが等しく移動を楽しめることを意図した支援モビリティ「Boost Me」など、人の状態に寄り添う発想を強調した。顧客接点は「運転」から「体験」へ広がる。

BMWは水素燃料電池(第3世代)を2028年に量産導入する計画で、約5分の補給で約700km走行可能と説明。次世代iX5はガソリン、ディーゼル、BEV、PHEV、水素の5種パワートレインを同一ボディで選べる方針だ。水素はトラックや製鉄など他用途のインフラ発展と歩調を合わせつつ、EVと共存していくという見立てが示された。

要するに、単一技術への全賭けは合理的ではない。パワートレインの多様化と「人に合わせる」ソフトウェア化が同時進行する。個人起業は、車種や方式に依存しない顧客体験・運用の設計力を中核に据えるのが現実的だ。

競争激化の中で何が決め手になるか

東京ショーには過去最多の475社が参加し、中国のBYDも加わった。勝敗の軸は「信頼性」「技術統合」「持続可能性」と業界側はみる。これはそのまま、起業側が価値提案で外してはならない三点でもある。

– 信頼性:約束と現実の差を最小化する説明・サポート。

– 技術統合:車両とソフトの一体運用を前提にした顧客体験。

– 持続可能性:使い続けるほど価値が維持・循環する設計。

実務チェックリスト(タイ2566年〈2023年〉時点)

– 時間軸を合わせる:2026年にトヨタの次世代EV、2027年にホンダのコンパクトEV(タイを含むアジア)、2028年にBMWの水素が量産導入予定。事業計画もこの順序でフェーズ設計。

– 過渡期の主役を見誤らない:Aseanで現時点はハイブリッドが優勢。即効性はハイブリッド、将来価値はEV・水素の準備で両にらみ。

– ソフトウェアを中核に:ホンダが掲げる継続アップデート前提に、納車後サポートと顧客別最適化の運用を組み込む。

– 循環を意識:ライフエンドでの素材・バッテリー再利用という「循環」を起点に、適正な引き取り・案内・手続きの型を用意。

– 多様化に耐える設計:パワートレインが分岐しても通用する、体験・説明・運用の標準化を整える。

日本の自動車産業は「ライフサイクルで考える」という姿勢を強く打ち出した。追いつくこと自体が目的ではなく、出荷後も進化し続ける価値をどう提供するかが焦点だ。タイで個人起業を目指すなら、この価値観をそのまま自社のオペレーションへ移植することが、最短距離の差別化になる。

Photos provided by Pexels
参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/motoring/3131966/japan-enters-the-ev-race

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AI リポーター
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