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2025年10月8日

タイで個人起業する日本人のための2025–26実務戦略

タイで個人起業を考える日本人へ:世界銀行見通しが示す現実と打ち手(2025–2026)

世界銀行が公表した東アジア・太平洋経済アップデートは、地域全体の先行きに「減速の兆し」が広がる現実を示した。タイに関しては、2025年の実質成長率見通しが2.0%へ引き上げられ(4月時点の1.6%から上方修正)、一方で2026年は1.8%の据え置き——潜在成長率に届かない水準が続く。経済学者が「持続的に年3〜4%」の成長が必要と指摘するなか、足元の勢いは弱いままだ。

中国については先行き見通しが上方修正された一方で、輸出の伸び鈍化、公的債務の増加を背景とした財政刺激の縮小、構造的な減速が重なり、来年の成長は低速運転になるとの認識が示された。地域全体では2025年4.4%(前回比+0.2ポイント)、2026年4.5%と、強い加速感は見込みにくい。

背景にあるのは、消費者・企業マインドの弱さ、新規輸出受注の低迷、貿易障壁の上昇、世界的な政策不確実性の高止まり、そして世界成長の鈍化だ。インドネシアとタイでは政策・政治の不確実性が相対的に高く、企業は「様子見」を決め込み、設備投資を延期・縮小する動きが指摘されている。

減速局面での「個人起業」実務:守りを固め、攻めどころを見極める

タイでこれから個人起業を目指す日本人にとって、上記の環境は「過度な悲観」でも「根拠なき楽観」でもなく、冷静な設計図を求めるシグナルだ。ポイントは次の通りだ。

– 需要見通しは保守的に置く

– 新規輸出受注の弱さが示されるなか、海外販売の立ち上げは時間を要する前提で計画する。

– 消費・企業心理の弱さを織り込み、売上の立ち上がりにラグがある想定でキャッシュ計画を作る。

– 設備投資は「小刻み」に

– 企業が様子見で投資を先送りする局面では、個人起業も固定費を軽く保ち、テスト→検証→拡張の段階投資を徹底する。

– 初期費用の大きいモデルは分割・サブスクリプション活用などで負担を平準化する。

– 政策・規制の不確実性に備える

– 契約や価格設定に見直し条項を入れる、仕入・販路を複線化するなど「可逆性(やめられる/変えられる)」を高める。

– 行政手続きや許認可のアップデート頻度をモニターし、影響が直撃しないよう業務設計を柔軟にする。

– 短期刺激に依存しない収益設計

– 世界銀行は、短期の財政措置よりも国内の構造改革が長期的に有効と指摘。起業家側も一過性の需要喚起に期待を乗せ過ぎず、反復購入・継続課金など「持続性ある売上」を柱に据える。

– 意思決定のスピードと検証の質

– 需要の弱さは「やってみて直す」コストを高める。小さな実験で仮説を素早く検証し、勝ち筋にのみ資源を集中する。

実行チェックリスト(2025–2026年版)

– 売上予算:ベース・悲観・楽観の3シナリオで月次キャッシュフローを作成

– 投資計画:初期投資を四半期ごとのマイルストンに分解、達成条件未充足なら自動で次期繰り延べ

– 取引先開拓:輸出に時間がかかる前提で国内B2B/B2Cの導線も同時に構築

– 契約設計:価格改定・供給代替の条項整備、支払サイトの短縮交渉

– 指標管理:受注リードタイム、商談滞留日数、返品率など「減速時に悪化しやすいKPI」を週次で可視化

数字が語る「現実」を味方に

タイの2025年成長率は2.0%に上方修正されたが、2026年は1.8%と潜在成長に届かないとの見立てだ。地域全体も4%台半ばでの伸びにとどまり、勢いは限定的である。起業家にとってこれは、過度なリスクを抱えずに市場検証を進める「時間」を得たとも読める。需要が強くない局面では、資金繰りと検証速度こそが競争力になる。短期の波に翻弄されず、構造的に強い事業(継続率、収益性、可変費化)を粘り強く組み立てたい。

なお、タイの年号(仏暦)と西暦の対応は次の通り。仏暦2566年=西暦2023年、したがって2025年は仏暦2568年、2026年は2569年に相当する。現地の行政・商慣行では仏暦表記が一般的なため、契約・書類での年号確認を失念しないこと。

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参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3117212/world-bank-sees-momentum-slowing-in-asia

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AI リポーター
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