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中国、トランプ政権の新たな関税に毅然として対応準備を整える
アメリカの対中関税に中国は「恐れていない」
アメリカが中国製品に対して新たに10%の関税を課すと発表したことに対し、中国は「恐れていない」とし、毅然とした対応を準備していると専門家が述べています。この関税措置は、トランプ前大統領が以前に示唆した最大60%の高率関税から大幅に引き下げられたものの、両国間の緊張は引き続き高まっています。
ホワイトハウスの発表によると、この10%の関税はアメリカへの違法なフェンタニルの流入や移民問題に対する「必要な対応」として位置づけられています。ホワイトハウス報道官のキャロライン・リービット氏は、「これらの関税は、我が国に数百万の命を奪った違法薬物の流入を阻止し、移民の流入を抑えるために必要な措置である」と述べています。
中国の対抗策とアメリカへの影響
シンガポール国立大学の国際政策担当助教授ディラン・ロ氏は、今回の10%関税はトランプ前大統領が掲げた最大60%の関税よりも「大幅に縮小された」ものであると指摘しています。ロ氏は、「中国政府はトランプ氏の動きに対する対抗策を既に検討しており、アメリカ製品に対する報復関税を課すオプションを持っているはずだ」と述べています。しかし、これらの対抗策は「大規模ではなく、慎重かつ適切に策定されるため、さらなる制裁を招くことはないだろう」と見通しています。
ロ氏はさらに、「今回の関税措置だけでは米中関係に大きな変化をもたらすことはない」とし、「多くの市場はすでに関税を織り込んでおり、北京はこの動きを予測していたはずだ」と述べています。
中国の準備と経済的自立性
北京の人民大学国際問題研究所所長である王一偉氏は、中国が「長い間準備を整えてきた」と述べ、今回の関税は「時間の問題」であったと指摘しています。王氏は、トランプ前大統領が初めて大統領に就任した際に関税を課した背景には米中間の貿易赤字がありましたが、今回の関税はアメリカの産業を国内に呼び戻すための手段として用いられていると分析しています。
さらに、王氏は「中国は過去8年間とは異なる存在であり、アメリカは中国のグローバルサプライチェーンにおける優位性を揺るがすことはできない」と述べています。「中国は確実に堅実に対応する」と強調し、中国はレアアースなどアメリカが高度に依存している産業を考慮した緊急対策を既に策定していると述べました。
中国経済は他国と比較して比較的自立しているため、今回の関税の影響は限定的であり、アメリカ国内の消費や経済に対する影響も懸念されています。王氏は、「関税はアメリカにおけるインフレを引き起こし、国内消費に影響を与えるだろう」と指摘しています。
米中関係の今後と協力の可能性
王氏は、短期的には米中関係が「それほど悪化していない」兆候が見られると述べました。両国は共通の利益を共有しており、ウクライナ戦争などの分野で協力できる余地があると指摘しています。「長期的には米中関係には構造的な課題が存在するが、現時点ではトランプ政権下で中国との交渉の余地がある」と述べています。
このような見解は、先月の就任式前にトランプ前大統領が中国国家主席習近平氏と行った「良好な」通話や、中国の副主席である韓正氏がアメリカの大統領就任式に派遣されたことなど、両国間の一時的な緩和を示しています。また、トランプ前大統領が就任後100日以内に中国を訪問する意向を示していることも、緊張緩和の一因とされています。
まとめ
アメリカによる中国製品への新たな関税措置は、米中関係における緊張を再び高めるものの、中国側は冷静に対応を準備しており、これ以上のエスカレーションは避けられるとの見方が強まっています。中国の経済的自立性と包括的な準備計画により、今回の関税には大きなダメージを受けることなく対応できると予想されています。
一方で、アメリカ国内では関税による物価上昇や消費減退が懸念され、経済への影響が指摘されています。今後の米中関係は、経済的な対立だけでなく、地政学的な協力の可能性も視野に入れた複雑な展開が予想されます。両国が共通の利益を見出し、協力関係を築くことで、長期的な安定を図ることが求められています。
今回の関税措置は、米中間のパワーバランスや経済的依存関係を再確認する契機となり、今後の国際経済情勢にも大きな影響を与えることとなるでしょう。日本を含む他国も、この動向を注視し、自国の経済政策に反映させる必要があります。
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参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/2952772/this-time-around-china-is-surely-ready-to-respond-to-trumps-tariffs-analysts-say