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2026年3月7日

タイで起業する日本人が知るべき原産地表示と輸出リスク

米国向け輸出で強まる「Made in Thailand」取り締まり

タイで個人起業を目指す日本人が押さえるべきリスクと実務対応

タイで個人事業として製造業や貿易業を始め、将来は米国などへの輸出を狙う日本人にとって、「原産地表示」をめぐる環境が一段と厳しくなっています。

タイ当局は、米国向けを中心とした「Made in Thailand」の虚偽表示や、反ダンピング関税の回避行為に対して大規模な取り締まりを開始しました。

タイでは一般に仏暦(例:仏暦2566年=西暦2023年)が使われますが、海外との取引では西暦表示が基本です。西暦ベースのタイ当局の動きを正確に理解しておくことは、起業後のコンプライアンス対応に直結します。

以下では、報道された事実関係を整理しつつ、日本人の個人起業家にとっての実務的な意味合いを解説します。

1. 米国がタイを「要注視国」と見る理由

タイ商務省外国貿易局(DFT)のアラダ・フアンットーン局長によれば、タイから米国への輸出がこの1年で急増し、

タイは米国向け輸出国ランキングで、前年の11位から7位へと躍進しました。

この急増を受け、米国側はタイ発の輸出品に対し、

「本当にタイ原産なのか」「他国産をタイ経由で“すり替え”ていないか」を厳しくチェックし始めています。

さらに、タイは米国による反ダンピング措置の対象品目数でも「上位グループ」に入っています。

国別の件数は以下の通りです。

– 中国:707件(最多)

– 韓国:137件

– インド:108件

– 台湾:103件

– タイ:73件

反ダンピング対象が多いということは、「不公正な低価格輸出」や「価格構造への疑念」が米国側に存在するということを意味します。

その延長線上で、原産地表示の厳格化が進むのは自然な流れとも言えます。

DFTと関税局は、特に米国向け輸出について、

「タイ産と偽って輸出される商品」への取り締まりを強化することで足並みをそろえました。

局長は、信頼性を維持し、後からの追徴課税や遡及調査による大きなダメージを避けるためにも、

検査体制の強化が不可欠だと強調しています。

2. 取り締まりは「本気モード」——押収総額5億バーツ超

タイ関税局のファントン・ロイクンナンタ局長は、DFTと連携して、

「反ダンピング関税の回避」「虚偽の原産地表示」に対する合同取り締まりを進めていると明らかにしました。

2-1. 数字で見る取り締まりの規模

2025年10月から2026年2月までの約5カ月間に、当局が押収したのは以下の通りです。

– 反ダンピング関税の回避を試みた商品:1億1,000万バーツ相当

– 原産地を偽装した商品:3億9,300万バーツ相当

合計で5億300万バーツ超が押収され、

前年同期比でみると、

– 反ダンピング回避事案:押収額が61%増

– 虚偽原産地表示事案:押収額が142%増

と、大幅な伸びとなっています。

数字だけ見ても、「見せしめ的な一斉摘発」ではなく、継続的で本格的な取り締まり局面に入っていることが分かります。

2-2. 典型事例:「中国製なのにMade in Thailand」

代表的なケースとして紹介されたのが、バンコク港税関が扱った事案です。

中国から輸入された商品に「Made in Thailand」と表示し、タイ原産として輸出しようとしていたもので、押収されたのは:

– 枕カバー

– 浮き輪付き子ども用スイムリング

– 空気注入式のフローティングチェア用カバー

– 通常の空気注入式スイムリング

– スイムリング用の布カバー

など計50,824点。

推定経済損失は1,120万バーツとされています。

さらに別件で、

– 爪切りおよびミラーケース:85,320点(推定経済損失494万バーツ)

も押収されています。

いずれも、中国から輸入された完成品あるいは部材に、

タイ原産であるかのような表示を付し、関税の優遇やマーケティング上のメリットを得ようとした疑いがある案件です。

3. 偽装表示は「三重の法律違反」——罰則強化の動きも

原産地を偽って表示する行為は、タイ法上も明確な違法行為です。

今回のような事案では、少なくとも次の3つの法律に抵触し得るとされています。

1. 1938年輸入禁止・虚偽原産地表示法

2. 1991年商標法

3. 2017年関税法

虚偽表示により、消費者が「タイで製造された商品」だと誤認することは、

消費者保護のみならず、正当にビジネスを行うタイ企業や投資家への打撃となります。

関税局は、これまで輸出における虚偽原産地表示の罰則が「小額の罰金」にとどまっていた点を問題視し、

今後は「虚偽表示が確認された貨物を没収できるよう、罰則枠組みを改正する方向で準備している」と述べています。

つまり、形式的な罰金を払えば済む時代から、

商品そのものを失い、ビジネスの継続性にも直撃する時代に移りつつある、ということです。

4. タイで起業する日本人にとっての「実務的なリスク」

では、タイで個人事業を始める日本人——特に、製造業や通販、貿易業を構想している読者にとって、

これらの動きは何を意味するのでしょうか。

4-1. 「単なる経由地ビジネス」は危険水域

タイに会社や個人事業を構え、実態としては他国製品を輸入して再梱包・再表示し、

「タイ原産」として輸出するようなモデルは、極めてリスクが高いと言えます。

– 米国側の監視強化

– タイ関税局・DFTによる共同取り締まり

– 罰則の強化(没収を含む方向性)

という三重苦の中で、「迂回輸出」的なビジネスモデルは長期的に成立しにくくなります。

4-2. 「知らなかった」では済まない原産地管理

個人起業家であっても、仕入先や協力工場を通じて輸出に関与する以上、

原産地表示の責任からは逃れられません。

– タイ国内のどこで、どの工程が行われたのか

– 主要な部材・完成品はどの国から輸入されたのか

– 原産地証明や関連書類は誰が、どのように管理しているのか

といった点を、起業の初期段階から把握し、

ビジネススキームとして「説明可能な構造」にしておくことが不可欠です。

5. 個人起業家のための「原産地コンプライアンス」チェックリスト

報道された事実関係を前提に、タイで個人ビジネスを立ち上げる日本人が、

最低限押さえておくべきポイントを整理しておきます。

5-1. ビジネスモデルの自問自答

– 自社(自分)のタイでの付加価値は何か

– 実際に製造・加工・組立などの工程をタイ国内で行っているか

– 単に他国製品を輸入し、梱包やラベリングだけをタイで行っていないか

– 米国向け輸出や、関税優遇を前提としたスキームになっていないか

この段階で「タイ原産と主張するには説明しづらい」と感じるモデルは、

いずれ当局の監視対象となるリスクが高いと考えるべきです。

5-2. サプライヤー・委託先との関係整理

– 仕入先に対し、「その商品・部材の原産国」を文書で確認しているか

– 委託製造やOEMを行う場合、「どこまでがタイ国内の加工か」を契約上明確にしているか

– 協力工場が、他国製品を「Made in Thailand」に付け替えていないかをチェックできるか

表向きのインボイスだけでなく、

実際の製造・物流プロセスにまで踏み込んだ確認が重要になります。

5-3. 書類と表示の一貫性

– インボイス、パッキングリスト、原産地証明、ラベル表示の内容は整合しているか

– 英語表記や「Made in …」表示が、実際の原産国と一致しているか

– 関税優遇(タリフ・プレビレッジ)を利用する場合、その要件を満たす証拠書類を保持しているか

虚偽表示は、前述の1938年法・1991年商標法・2017年関税法の違反となり得ます。

「ラベル担当が慣例で貼ってしまった」「小規模だから見逃される」といった楽観は通用しません。

6. 「攻め」と「守り」を両立させたタイ発ビジネスを

ファントン関税局長は、虚偽原産地表示の取り締まり強化について、

– タイ国内企業を保護し

– 公正な競争を促し

– 安定的かつ持続可能な経済発展を支え

– 国際社会からの信認を維持する

ことが狙いだと説明しています。

これは裏を返せば、

「ルールを守る事業者にとっては、むしろ追い風になり得る」ということでもあります。

タイで個人起業を志す日本人にとっては、

– 原産地コンプライアンスをビジネスモデルの中核に据える

– 小規模のうちから、サプライチェーンと表示の透明性を確保する

– 米国向け輸出や関税優遇スキームを視野に入れるなら、初期段階でリスクを織り込む

といった「守りの設計」が、

結果として長期的な「攻めの競争力」を生むことになります。

タイの輸出環境は、今後も米国を中心に厳しい監視が続く公算が大きい以上、

これからタイでビジネスを始める日本人こそ、

最初の一歩から「Made in Thailand」の重みを意識した戦略設計が求められます。

Photos provided by Pexels
参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3210864/fake-thai-exports-face-fresh-crackdown

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AI リポーター
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