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2025年12月6日

アンダマン海探鉱入札で個人起業家が狙う機会とリスク

アンダマン海で動き出すタイの石油・ガス探鉱——個人起業家が押さえるべき機会とリスク

タイの鉱物燃料局(DMF)がアンダマン海での石油・ガスの探鉱・生産(E&P)入札を2026年1月までに実施すると表明した。近年減少傾向にある国内供給を補うエネルギー安全保障策の一環で、同局は今後2年程度で国際的な石油・ガス大手の関心を惹きつけられると見る。2566年(2023年)にインドネシア側の南アンダマン海で確認埋蔵量6〜7兆立方フィートのガス発見があったこと、またマレーシアが近接海域で掘削投資を募っていることが、その見通しを下支えする。

本稿では、アンダマン海の動向がタイでの個人起業にどのような意味を持つのか、事業機会とリスクを整理する。

何が起きているのか:入札「ラウンド26」と地質ポテンシャル

– DMFはアンダマン海のE&P入札(ラウンド26)の詳細を詰めており、応募日程の告知準備を進めている。入札は2026年1月までに実施予定。

– 対象区画はタイ南部の主要観光地から離れた海域に設定され、水深は200メートルを超える可能性がある。

– 周辺では、アブダビの国営系であるムバダラ・エナジーが2566年(2023年)、インドネシア政府の許可に基づきガスを発見。地域一帯の地質ポテンシャルへの期待を高めた。

– タイ側では1971年に初のアンダマン海探鉱許可が出され、2005年までに追加許可が発給されたが、当時は油ガスの発見に至っていない。今回の再開は過去の不発に対する環境変化を示唆する。

DMFのワラコーン・ブラームパラ長官は、将来的な操業者交代時の混乱を防ぐため、E&P関連法の見直しが必要だと強調している。実際、タイ湾のボンコットおよびエラワン両ガス田では2566〜2567年(2023〜2024年)に新規操業者が直ちに業務開始できず、国内ガス供給に影響が出た。天然ガスはタイの発電にとって重要燃料であり、供給の平常化は国家的な課題だ。

さらに同長官は、地下の二酸化炭素回収・貯留(CCS)施設をE&P枠組みに組み込むことも提言。タイは2050年(仏暦2593年)までのネットゼロ達成を掲げており、E&Pと気候コミットメントの整合性が重視されつつある。

個人起業家への示唆:3つの着眼点

1) タイムラインを読む

– 「今後2年で国際投資家の関心が集まる」という見通しと、「2026年1月までに入札」というスケジュールは、事業の立ち上げ時期を考える目安になる。準備期間を含め、2566〜2569年(2023〜2026年)は情報収集と関係構築の集中期間となる。

2) 地理・技術条件から逆算する

– 観光地から離れた海域かつ水深200メートル超の可能性は、海上での運用に伴う安全・補給・環境対応の重要性を物語る。現場に近い産業系サービスや遠隔支援の需要が生まれやすいという点は、事業ドメイン設定のヒントになる。

3) 制度とエネルギー供給の変動に備える

– 2566〜2567年(2023〜2024年)のガス田移行遅延は、操業者交代時に業務が途切れるリスクを示した。契約やプロジェクトの前提条件が制度改定で変わり得ることも織り込み、柔軟性を持った計画とキャッシュフロー管理が要る。CCSがE&P枠組みに組み込まれる方向感は、環境配慮型のサービス提供を企図する起業家にとって中長期テーマとなる。

具体的アクション:今からできる準備

– 公式発表の定点観測

– ラウンド26の告知、応募日程、対象区画の条件を定期的にチェック。発表直後に動ける準備を整える。

– 関係者マッピング

– 入札参加が見込まれる海外E&P企業や、そのサプライチェーンの関心領域を整理。英語での情報発信素材を用意する。

– リスク前提の業務設計

– 操業者交代や手続きの遅延が起きても耐えられるよう、契約期間・支払い条件・在庫や人員の柔軟性を確保する。

– HSEと低炭素の基本対応

– 安全衛生・環境(HSE)の方針と手順を明文化。CCS関連の基礎知見をキャッチアップし、将来の要求水準に備える。

– 遠隔地オペレーション対応

– 通信・緊急時対応・補給計画など、遠隔地ならではの運用要件を洗い出し、パートナーと役割分担を明確化する。

リスクの見立て:期待と不確実性の両にらみ

– 探鉱リスクの残存

– タイ側では1971年以降、2005年までの許可発給にもかかわらず発見に至らなかった経緯がある。一方で、2566年(2023年)の周辺海域での発見は期待値を押し上げた。早期に過度な前提を置かず、マイルストーンごとに投資判断を見直すのが得策だ。

– 供給変動の事業影響

– 2566〜2567年(2023〜2024年)の遅延事例が示す通り、国内ガス供給は一時的な揺らぎを免れない。エネルギーコストやプロジェクト進行に与える影響を常に点検し、代替策を用意しておく。

– 制度変更リスクと機会

– E&P法の見直しやCCSの制度組み込みは、要件の追加や手続きの変化を伴い得る。負担増の可能性と同時に、新しい需要(環境対応、データ管理、安全教育など)を生む入り口にもなりうる。

結び:2569年(2026年)を見据えた「周辺価値」戦略を

アンダマン海のE&Pは、タイのエネルギー安全保障と気候目標(2050年=仏暦2593年のネットゼロ)という二つの国家アジェンダの重なる地点にある。入札は2569年(2026年)までに動き、周辺国の発見や投資呼びかけが地域の期待を押し上げている。

個人起業家にとっての鍵は、本体の探鉱・生産に直接参入することよりも、遠隔海域・深水・環境対応という条件が生み出す「周辺価値」をどう設計するかだ。制度と市場の変化に敏感でありながら、段階的に投資と関係構築を進める。2566年(2023年)以降に浮かび上がった事実関係を足場に、現実的な一歩を今日から積み上げたい。

Photos provided by Pexels
参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3151184/andaman-oil-to-lure-global-investors

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