タイで個人起業を考える日本人への実務ヒント——Medplastの「GROW with SAP」導入に学ぶ
タイで個人事業を立ち上げるなら、早期から「拡張に耐える運用」と「規制対応」を見据えた仕組みづくりが要諦だ。タイの医療用粘着テープ分野で台頭するMedplastは、成長企業向けのクラウドERP「GROW with SAP」を中核に据え、業務の俊敏性・コンプライアンス・スケーラビリティを一体で強化した。タイ製造業で進むクラウド活用の潮流を映す事例であり、小規模起業にも示唆は多い。なお、タイでは公的書類や年度感覚に仏暦が用いられる(例:仏暦2566年=西暦2023年)。計画立案や対外説明では年表記の整合にも留意したい。
事例の要点:スピード、規律、拡張性を同時達成
医療機器は高い正確性・安全性・品質が不可欠な、規制の厳しい産業だ。Medplastは新規事業ユニットの段階から、GROW with SAPを導入することで、以下を実現した。
– 業界のベストプラクティスを「初日から」適用し、業務の一貫性と統制を確保
この記事の目次
– 仕掛から出荷までのトレーサビリティを強化し、医療水準に適う品質保証を徹底
– SAP S/4HANA Cloud Public Editionを軸に、社内承認の迅速化、受注から入金までのリードタイム短縮、全社横断の可視性向上を達成
– 国内市場のみならず、グローバル市場でも自信を持って競争できる“デジタル基盤”を構築
同社ゼネラルマネジャーは、成長と規制対応を両立するために、標準化されたクラウドERPで業務を合理化し、製品の信頼性を極限まで高めることが肝だったと指摘する。医療分野では微小な不具合が患者の安全に直結する。だからこそ、初期段階から「後戻りしない設計」を採ったわけだ。
この動きは、タイの製造業各社が競争力と国際対応力の強化をめざしてクラウド技術を取り込む大きな流れにも重なる。SAPインドシナのマネージングディレクターは、稼働済みの業界標準プロセスを備えた“レディ・トゥ・ラン”のソリューションこそ、スピーディな変革と持続的成長の土台になると強調する。
実装の肝:NETIZENのローカライズ知見と方法論
導入を主導したのは、SAPのプラチナパートナーであるNETIZENだ。同社はクラウドERP展開に強みを持ち、以下の枠組みで成功確度を高めた。
– ローカライズ済みベストプラクティス「NETIZEN Peony」による迅速な立ち上げ
– 高度なアナリティクス、グローバル標準プロセス、AI駆動インサイトの組み込みで、全社の意思決定を高速化
– 20年以上の経験を踏まえた「BTX(Business Technology Transformation)」方法論で、顧客業務を深く理解し、長期スケーラブルな解決策に落とし込む
その結果、Medplastはエンドツーエンドで統合されたデータ駆動の業務へと再設計され、医療分野で求められる説明責任と製品完全性を担保しながら競争優位を確立した。SAPにとっても、東南アジアの中小企業にイノベーション・競争・スケールの武器を提供するというコミットメントを体現する案件となった。
個人起業家への実務示唆:小さく始めて、最初から「正しく」作る
Medplastは企業規模こそ異なるが、その着眼は個人事業にも転用できる。要点は「早期に標準を入れ、後からのやり直しコストを断つ」ことだ。
– 初日からの標準化
– 業界ベストプラクティスを参照し、“我流”のプロセスを増やさない。手順の一貫性が拡張性を生む。
– トレーサビリティの設計
– 仕入・製造・出荷・クレームの各接点で記録を残し、可視化する。品質と信頼の基礎体力になる。
– 受注から入金までの短縮
– 受注処理、請求、入金突合を一気通貫でデジタル化し、資金回収までの時間を短くする。
– 承認フローの簡素化・電子化
– 小規模でも承認ルールを明文化し、ワークフローで回す。意思決定が遅れない。
– 可視性の確保
– 在庫、仕掛、原価、納期の見える化は、納期遵守と無駄の削減に直結する。
– パートナーの活用
– ローカライズ済みの枠組みや方法論(NETIZENのPeonyやBTXのような)を持つ実装パートナーは、立ち上げの山を低くする。
– データ×AIの意思決定
– 現場データに基づく簡潔なダッシュボードとAIインサイトを用い、判断を迅速化する。
– 将来のスケール前提
– 国内外の市場に広げる前提で、プロセスとシステムを早期にクラウドへ。設備よりも“拡張できる運用”に投資する。
結び:規模より「基盤」が競争力を決める
Medplastの選択は、「スピードか、規律か」という二者択一を否定した。クラウドERPにより、スピード・規制対応・拡張性の三つ巴を同時に押し上げている。タイで個人起業を志す読者にとっても、学ぶべき本質は同じだ。小さく始めても、最初から正しい基盤を選ぶ。プロセスを標準化し、データで経営する。その積み重ねが、国内でも海外でも通用する競争力につながる。
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参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3154534/medplast-accelerates-global-growth-with-grow-with-sap
