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2025年11月13日

ニッタヤ・ガイヤーンに学ぶ、タイ個人起業の勝ち筋

タイ個人起業の現場から──「ニッタヤ・ガイヤーン」に見る、競争時代の勝ち筋

経済の不透明感が続くなか、タイ・イサーン料理の老舗ブランド「ニッタヤ・ガイヤーン」が示すのは、拡大よりも“質の維持”と“本質の徹底”だ。同社は25年にわたり「家庭の味」と「温かなホスピタリティ」を核に、変化への適応と本質の両立で成長を続けてきた。タイでの個人起業を志す日本人にとって、現場で役立つ示唆が詰まっている。

本質を守りつつ体験を磨く:4つの中核戦略

執行役員のパデート・カンタジンダ氏は、競合激化の中でも同社が選んだ軸足を次の4点に整理する。

– ウイニング・ゾーンの明確化

日常使いできる「普遍的においしい」コンフォートフードに注力。広く受け入れられる味のゾーンを勝ち筋として定義する。

– 職人性と品質の一貫性

「おいしさは素材から」。セントラルキッチンで味を標準化し、どの店舗でも同水準の体験を届ける。

– 「ボンド・ビジネス」の構築

温かい接客と記憶に残る食体験で、顧客・スタッフとの情緒的な絆を育てる。

– 立地の選択と集中

高ポテンシャルエリアへの選択的展開。アクセス性を高めつつ、持続的な成長を優先する。

同氏はまた、店舗デザイン、サービスのイノベーション、デリバリーチャネルまで顧客体験を近代化しながらも、「料理の魂」を損なわないことが要と強調する。個人店でも、内装・動線・受け取り体験の見直しは小さな投資で差別化につながる。

価格の安定は信頼の指標:原価上昇期の打ち手

経済が不安定な局面では、大手チェーンもブランド多角化や高品質食材の採用で差別化を図る。同社はそこで「価格の安定維持」を顧客満足の中核に置く。鍵は内部管理の徹底にあるという。コストを握り、品質と手頃感の両立を崩さない。個人起業でも、仕入れの基準化、ロスの可視化、オペレーションの平準化が、値上げ圧力を和らげる実務解になる。

数字で読み解く意思決定:改装投資と出店のバランス

今年、同社は3店舗(サイロム通り[パホンヨーティン・ソイ8]、ランシット・クローン2、ピンクラオ)を、総額3,000万バーツ超で改装。より現代的でコンテンポラリーな空間に刷新する。また、バンコク外への初進出として、ロータス・サラブリー店を800万バーツで開業した。店舗数は現在31店で、主にバンコクに集中している。

売上は着実に拡大し、2021年(仏暦2564年)6億2,800万バーツから、2024年(仏暦2567年)9億8,600万バーツへ。2025年(仏暦2568年)は10億バーツ達成を見込む。もっとも、今後3~5年の景気は力強さを欠くとの見立てで、拡大より既存店の成長維持を最優先に据える構えだ。積極出店に走らず、改装・体験価値の磨き込みでLTVを高める発想は、資本制約の大きい個人事業にこそ再現性が高い。

個人起業家への実務ヒント

– 「勝てる味」を決めて広げすぎない:誰もが日常使いできるメニューに集中し、看板商品を核に据える。

– 仕込みと品質を標準化:小規模でもレシピ・調理手順・盛り付けを数値化して、どの時間帯でも同じ体験に。

– 体験の近代化は低投資から:席導線、注文・受取のわかりやすさ、デリバリー対応を見直し、顧客負担を減らす。

– 価格は“最後の防衛線”:内部管理で原価とロスを抑え、値頃感を守る。値付けの一貫性が信頼を積む。

– 立地は選択と集中:高い来店確度の商圏に絞り、既存店の回転・単価をまず高める。拡大は筋の良いタイミングで。

まとめ:本質×一貫性が、変動期の最大のリスクヘッジ

イサーン料理という普遍性のある領域で、味の本質を守りながら体験を更新する。価格を安定させ、内部管理で原価上昇に耐える。出店は急がず、既存店の質を磨く。ニッタヤ・ガイヤーンの選択は、景気の波に左右されにくい事業体質づくりの教科書だ。タイで個人起業を志すなら、まずは「本質の定義」と「一貫性の仕組み化」から手を付けたい。なお、年次の把握や行政・商取引文書では仏暦が用いられることが多い(例:仏暦2566年=西暦2023年)。数字を正確に読む姿勢も、現場力の一部である。

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参照記事:https://www.bangkokpost.com/business/general/3135456/nittaya-kai-yang-in-b30m-renovation

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